脳梗塞
2015/03/29
脳梗塞について
脳梗塞(cerebral infarction)とは、脳動脈の閉塞、または狭窄によって、脳組織が酸素や栄養不足のため壊死や壊死に近い状態になる事。
分類
機序
梗塞は、血管が閉塞する機序によって血栓性・塞栓性・血行力学性の3種類に分類される。
①血栓性(thrombotic)
動脈硬化の狭窄が徐々に進行し、最終的に血栓で閉塞する病態。
②塞栓性(embolic)
塞栓がはがれ、脳動脈に流入し急性閉塞する病態。症状は突発的に発症することがほとんど。
③血行力学性(hemodynamic)
梗塞巣に閉塞・高度狭窄があるが、普段は症状がでない程度で、脳血流が残っている状態。急に、血圧低下、脱水、貧血、低酸素血症が生じた時に最も血流の届きにくい部分が虚血・梗塞に陥る病態。
種類
脳梗塞はアテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓・ラクナ梗塞・その他の脳梗塞の4種類に分類される。
①アテローム血栓性脳梗塞
動脈硬化によってアテローム(粥腫)が動脈内腔を狭窄化し、十分な脳血流を保てなくなったもの。また、アテロームが動脈壁からはがれ落ちて末梢に詰まったものもアテローム血栓性に分類される。
壊死範囲はそれほど大きくならない傾向がある。血管に50%以上の狭窄があること、梗塞巣が1.5cm以上であることが診断基準に含まれる。
②塞栓性(脳塞栓症)(embolism)
脳血管の病変ではなく、流れてきた血栓(栓子)が詰まることで起こる脳虚血。それまで健常だった血流が突然閉塞するため、壊死範囲はより大きく、症状はより激烈になる傾向がある。また塞栓は複数生じることがあるので、病巣が多発することもよくある。原因として最も多いのは心臓で生成する血栓であり、不整脈(心房細動)に起因する心原性脳塞栓が多い。予防には抗凝固薬(ワルファリン)を用いる。
1.5cm以上の梗塞巣があり、塞栓源の心疾患が認められることまたは複数の血管領域に多発する急性期梗塞を確認することが診断基準に含まれる。
③ラクナ梗塞
ラクナ梗塞(lacunar infarction )は本来、直径1.5cm以下の小さな梗塞を意味する。ラクナ梗塞は上記の2種類とは違った機序が関わっているとみられていることからそれ自体がひとつの分類となっている。特徴としては感覚障害と麻痺が同時に存在しないタイプがラクナ梗塞ではありえる。ラクナ症候群は領域の1.5cm以内の小梗塞であり、病巣近位の責任血管の50%以上の狭窄は認めないものとされている。
心原性脳梗塞 | アテローム血栓性脳梗塞 | ラクナ梗塞 | |
---|---|---|---|
発症形式 | 突発、重症 | 段階進行 | 軽症 |
既往歴、危険因子 | 心房細動や弁膜症 | 高血圧、糖尿病、高脂血症 | 高血圧、糖尿病 |
合併症 | 心不全 | 虚血性心疾患、下肢動脈閉塞症 | 特になし |
内科的治療 | 抗凝固薬 | 抗血小板薬 | 慢性期に降圧薬など |
外科的治療 | なし | ステント、内膜剥離術 | なし |
症状
脳梗塞は、壊死した領域の巣症状で発症するため症例によって多彩な症状を示す。
①片側の麻痺
②一側のしびれ感
③言語障害
④片側の失明
⑤失調
平衡機能の悪化、歩行時のつまづき、よろめき、身体一側性の協調運動障害。
⑥意識障害
⑦高次脳機能障害
失語や失認をはじめとした多彩な高次機能障害が出現することがある。半側空間無視が多くみられる。
発病原因
喫煙、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧など。抗血小板薬で予防を行う。また飲水を心がけて血流を良好に保つ。
検査
CT、MRI、MRA、BPAS、頸動脈エコー、心エコー
治療
脳梗塞の急性期には、壊死が進行することを阻止するのが第一。また、再梗塞予防も必要。血栓性とみられる場合には抗凝固薬を用いながらグリセリンやマンニトール等で血漿浸透圧を高めて脳浮腫の軽減を行う。発症24時間以内にエダラボン(ラジカット)を使用する。
①血栓溶解療法
アテローム血栓や塞栓症の場合、発症直後(3時間以内)であり、設備の整った医療機関であれば血管内カテーテルによってウロキナーゼを局所動脈内投与する血栓溶解療法が可能である。rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法と言う。
②保存的治療
発症して時間が経ち、血栓溶解療法適用外となったアテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞であれば、オザグレルナトリウム(抗血小板剤)・アルガトロバン(抗トロンビン薬、スロンノンHIなど)などを発症早期に投与する。ただし心原性塞栓症ではこれらは禁忌でありヘパリンなどが用いられる。
③開頭減圧術
70歳以下で、進行性意識障害でCT上脳幹圧迫所見のある梗塞の場合、薬剤による脳圧制御は困難で、開頭による外減圧術の必要がある。
④血管治療
・バルーンつきのマイクロカテーテルで血管を拡張する血管拡張術
・ステントを留置するステント留置術
・詰まった場所までカテーテルを進め血管を拡張させ、薬を注入する血管拡張術
・血栓を溶かす薬を注入する血栓溶解療法
・血栓自体をワイヤと糸でからめとって取る治療
予後
脳梗塞の予後は、リハビリテーションをどれだけ積極的に実施できたかによるところが大きい。病床で安静にする期間をできる限り短くし、早期から日常に近い生活を目指すことが重要。発症当日からのリハビリが有効である。
看護
・脳ヘルニアの予防
・2次合併症の予防
肺炎(呼吸数の増加、肺雑の有無、呼吸苦、SaO2値、チアノ-ゼの有無、発熱、咳嗽)
・可動域の保持
・再発防止(日常生活指導)
・精神的援助
・意識レベルの状態(JCS、GCS)、(開眼反応・運動反応・言語的反応)
・バイタルサインの変化
(血圧の上昇、脈圧の亢進、脈拍の低下60/分以下、呼吸の不整、呼吸数の低下)
・眼球症状(瞳孔の大きさ・形・左右差の有無、対光反射の有無とその方向、眼球運動の状態)
・頭蓋内圧亢進サインの有無(頭痛:部位、程度、持続時間)
・嘔気、嘔吐の状態、嘔物の性状
・麻痺の有無(部位、程度)
・痙攣の有無(種類と持続時間)
・水分バランス、電解質異常の有無
・呂律、言語障害、失禁の有無
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